そのような前史があったところに、一九九〇年代の「モバイル革命」と「インターネット革命」が起きた。水平分業の各レイヤーで、多くの新規プレーヤーが参加して、一大競争が始まった。携帯電話会社同士の競争が始まり、インターネットのプロバイダ(接続業者)同士の闘いが行われ、インターネット上で各種のサービスを提供するアプリケーションサービスプロバイダ同士も競い合った。多くの分野でさまざまなイノベーションが一気に開花したのが、一九九〇年代以降の話だ。エネルギー産業も通信産業とよく似たところがあって、一九九〇年代半ば以降、米国やヨーロッパで電力の自由化が進展したことは前にも述べた。これはいわゆる「発送電の分離」で、それまでの垂直統合の一社独占構造が崩れ、水平分業化が進展した。発電と送電網の分離は川上側の変化だから、通信で言う長距離とローカルの分離に近い。
この段階では、ユーザーにもわかるような変化が起きたわけではない。これも通信と同じだ。電力の自由化で電気料金が若干安くなった程度の話にすぎなかった。ただ、ここで水平分業化を進めておいたことが、その後のイノベーション爆発の呼び水となっていく可能性が高いのである。電力市場のイノベーションの本番はこれからだ。電力の世界でインターネット革命に相当するのは、「スマートグリッド(次世代送電網)」「省エネ低炭素型の分散型電力利用・発蓄電技術」のイノベーションだ。エンドユーザーに近い川下側の革命がこれから起きる可能性が高まっているのである。通信ネットワークで電力の供給側とエンドユーザー側、あるいは供給者問、ユーザー間を結び、IT技術と価格メカニズムも活用しながら電力需給の最適かつ絶妙なバランスを実現する。
再生可能子不ルギーを有効に使ううえでも欠かせない技術だ。そしてピークカットによって大型発電所への依存度も下げていく。このスマートグリッド周辺で、いままさに、さまざまなイノベーションが起こり始めているのだ。残念ながら、日本はいまだに発送電分離を認めておらず、地域独占の垂直統合型を維持している。欧米の動きと比べると、周回遅れと言ってもいいくらいのレベルなのだが、東日本大震災と福島第一原発事故を機に、パンドラの箱が開きかかっている。これを思い切り開放すれば、一気に遅れを挽回できる。そして通信でそうであったように、このイノベーションは、電力周りのビジネスを一気にグローバル化させる。省エネと人口減少で売り上げ低下圧力に悩む電力会社自身にとっても、また周辺の機器メーカーやITサービスにとっても千載一遇のチャンスなのだ。
にだが、いまのところ各電力会社の動きは鈍い。「スマートグリッドというけれど、それはいまだに各地で停電が頻発する米国だから必要なのであって、電力の安定供給が実現できている日本は現状でも十分『スマート』だ」というのが彼らの言い分だ。たしかに、分散的に発電して、分散的に電力を使うスマートグリッドの仕組みには、現状でさまざまな問題点があることは私も知っている。だが、そうした技術的な問題は、時間がたてば克服できるのだ。それはインターネットの歴史が証明している。
インターネットが登場したばかりの頃、NTTなどの「伝統的な」通信事業者の技術者の多くは、「インターネットなんて、接続を保証しないベストエフォート型のサービスだろう。安定供給が第一の我々が直接やるような仕事ではない」と言っていた。交換機を頂点とした中央集権型の垂直統合モデルに慣れた彼らにとって、中心を持だないネットワーク型のサービスはどこか信用できなかったのだろう。たしかに最初の頃は、インターネット回線はよく帽斡を起こしていて、つながらないこともあった。だが、中央集権システムにも弱点がある。中央が落ちたら全滅なのだ。しかしインターネットなら、回線のどこかがダウンしてもそこを迂回していけるので、いきなり全滅することはない。
2015年1月5日月曜日
2014年12月1日月曜日
チェック・アンド・バランスが機能している
一般にアメリカでは、企業に高額の賠償金が科されることによって、消費者に確実に安全がもたらされるといった資料などもあります。これをどう評価するかは見方によりますが、少なくともそういうニュースはほとんど日本には紹介されません。
また、ごく素朴な疑問として、「一般人の出した判決など到底信用できない」という意見がアメリカにはないのか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、陪審制でも「判決」を下すのは裁判官で、陪審員は「事実がどうであったか」ということを判断するだけなのです。
だから、その決定は「評決」と呼ばれます。陪審員の評決かおり、その後に、評決を元に裁判官の「判決」が出るという関係です。 すなわち、陪審員が決めた事実に、裁判官が法律を当てはめて、しかるべき結論を出す、というのが基本的な役割分担になっていて、陪審員の暴走を食い止めるのが裁判官の仕事でもあるのです。
これは一種のチェックーアンドーバランスの考え方ですが、今の日本の制度では「裁判官は絶対に暴走しない」という前提、田心い込みしかありません。そこで民事裁判では、先のハンバーガー事件のケースにもあったように、陪審評決が出ても裁判官の方で「これは高すぎるから半額にする」とか、「法律違反があった」という理由で陪審員とは違う判決を出すこともできるのです。
つまり、アメリカの民事裁判の場合には、どうみても陪審員が間違っていると判断したら、裁判官はそれを覆したり修正したりできるわけで、そこに裁判官の重い使命もあって、より妥当な結論を導く仕組みになっているのです。
また、ごく素朴な疑問として、「一般人の出した判決など到底信用できない」という意見がアメリカにはないのか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、陪審制でも「判決」を下すのは裁判官で、陪審員は「事実がどうであったか」ということを判断するだけなのです。
だから、その決定は「評決」と呼ばれます。陪審員の評決かおり、その後に、評決を元に裁判官の「判決」が出るという関係です。 すなわち、陪審員が決めた事実に、裁判官が法律を当てはめて、しかるべき結論を出す、というのが基本的な役割分担になっていて、陪審員の暴走を食い止めるのが裁判官の仕事でもあるのです。
これは一種のチェックーアンドーバランスの考え方ですが、今の日本の制度では「裁判官は絶対に暴走しない」という前提、田心い込みしかありません。そこで民事裁判では、先のハンバーガー事件のケースにもあったように、陪審評決が出ても裁判官の方で「これは高すぎるから半額にする」とか、「法律違反があった」という理由で陪審員とは違う判決を出すこともできるのです。
つまり、アメリカの民事裁判の場合には、どうみても陪審員が間違っていると判断したら、裁判官はそれを覆したり修正したりできるわけで、そこに裁判官の重い使命もあって、より妥当な結論を導く仕組みになっているのです。
2014年11月1日土曜日
北朝鮮の核・ミサイル開発疑惑
朝鮮半島では北朝鮮の核・ミサイル開発疑惑がなお完全に払拭できないものの、南北朝鮮はすでに非核化について合意。二〇〇〇年六月に平壌で分断後初めての南北首脳会談が開かれることが決まり、朝鮮半島の安定化に少なからぬ寄与が期待される段階を迎えた。
日米韓の協力体制によって、北朝鮮は軽水炉を提供する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が動き出して、事実上の多国間の地域安保対話も始まっている。
北朝鮮はさらに日米両国との関係改善によって、新しい経済関係構築のきっかけを掴もうとしており、日朝間では九二年十一月以来途絶えていた国交正常化交渉の本会談(大使級)が、二〇〇〇年四月から七年二ヵ月ぶりに平壌で再開された。
また、米朝高官協議も順調に回を重ねており、二〇〇〇年中には相互に連絡事務所を設置する交渉がまとまりそうで、核疑惑をめぐって米国による対北朝鮮制裁が取りざたされた九四年当時のとげとげしい雰囲気は、もはやない。
一方、朝鮮半島問題と並ぶ東アジアのもう一つの大きな紛争要因である中台関係は、二〇〇〇年三月の台湾総統選を牽制するため、中国が「台湾白書」を発表して、その中で台湾統一のための武力行使の条件に、「無期限の交渉拒否」を追加したため、一時的に緊張が高まった。
しかし、九六年三月の総統選の前後に、台湾を威嚇する狙いで中国が行ったミサイル射撃の軍事演習に比べれば、緊迫感はそれはどなかった。中台間にはすでに九三年から、直接対話の道が開かれており、両岸の貿易、経済交流も拡大基調が続いていて、今後さらに直接対話を積み重ねていけば、中台関係は政治的な緊張緩和に向かう可能性を否定できない。
もちろん、楽観要因ばかりではない。北朝鮮は対米関係の改善に自らの体制の生き残りをかけているが、米国の巨大な軍事力を相変わらず敵視、米国が一つ対応を誤れば冒険主義に走らないとも限らない。
また、中国は米国との「戦略的パートナーシップ」の確立による協調を求めながらも、冷戦に一人勝ちして「世界一極支配体制」を固めつつある米国の覇権主義に警戒感を募らせ、軍事力の強化に余念がない。
しかし、全体として見れば、アジア太平洋地域の多国間協調の流れを押しとどめることはできまい。経済面では東アジアにアジア太平洋経済協力会議(APEC)、東南アジアには東南アジア諸国連合(ASEAN)、ASEAN自由貿易地域(AFTA)などの多国間協力のネットワークが築かれ、発展を続けている。
日米韓の協力体制によって、北朝鮮は軽水炉を提供する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が動き出して、事実上の多国間の地域安保対話も始まっている。
北朝鮮はさらに日米両国との関係改善によって、新しい経済関係構築のきっかけを掴もうとしており、日朝間では九二年十一月以来途絶えていた国交正常化交渉の本会談(大使級)が、二〇〇〇年四月から七年二ヵ月ぶりに平壌で再開された。
また、米朝高官協議も順調に回を重ねており、二〇〇〇年中には相互に連絡事務所を設置する交渉がまとまりそうで、核疑惑をめぐって米国による対北朝鮮制裁が取りざたされた九四年当時のとげとげしい雰囲気は、もはやない。
一方、朝鮮半島問題と並ぶ東アジアのもう一つの大きな紛争要因である中台関係は、二〇〇〇年三月の台湾総統選を牽制するため、中国が「台湾白書」を発表して、その中で台湾統一のための武力行使の条件に、「無期限の交渉拒否」を追加したため、一時的に緊張が高まった。
しかし、九六年三月の総統選の前後に、台湾を威嚇する狙いで中国が行ったミサイル射撃の軍事演習に比べれば、緊迫感はそれはどなかった。中台間にはすでに九三年から、直接対話の道が開かれており、両岸の貿易、経済交流も拡大基調が続いていて、今後さらに直接対話を積み重ねていけば、中台関係は政治的な緊張緩和に向かう可能性を否定できない。
もちろん、楽観要因ばかりではない。北朝鮮は対米関係の改善に自らの体制の生き残りをかけているが、米国の巨大な軍事力を相変わらず敵視、米国が一つ対応を誤れば冒険主義に走らないとも限らない。
また、中国は米国との「戦略的パートナーシップ」の確立による協調を求めながらも、冷戦に一人勝ちして「世界一極支配体制」を固めつつある米国の覇権主義に警戒感を募らせ、軍事力の強化に余念がない。
しかし、全体として見れば、アジア太平洋地域の多国間協調の流れを押しとどめることはできまい。経済面では東アジアにアジア太平洋経済協力会議(APEC)、東南アジアには東南アジア諸国連合(ASEAN)、ASEAN自由貿易地域(AFTA)などの多国間協力のネットワークが築かれ、発展を続けている。
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