2014年4月17日木曜日

一億総金融マインドの時代

機関投資家は、こうして集まった巨額の資金を積極的に株式市場で運用し、その結果、株式市場の取り引きにおける機関投資家のシェアが上昇した。ミューチュアルーファンドの急成長が現在のアメリカの株式市場を支えているといわれているが、同様の現象はすでにバブル期のわが国においてみられたわけである。バブル崩壊後のわが国株式市場の不振の一因には、バブル期の現象が逆回転し、ファントラ・特金・生保マネーなどが引き揚げたこともあろう。

このことは、もしアメリカの株価が下落傾向を示したとき、ミューチュアルーファンドが資金を引き揚げるようなことがあったならば、わが国のバブル崩壊どころの騒ぎでは済まなくなることを示している。その時にはまた、いくら自己責任の国・アメリカとはいえ、老後の生活に不安を覚えたアメリカ国民のパニックを誘うことであろう。

個人部門でも、年間資金調達額が八五年の九兆円から八九年には三二兆円に増加した。借金をしてまで金融活動に参加しようとの姿勢が見られる。一方、運用面では、規制金利預金から自由金利預金へのシフト、投資信託や一時払い養老保険を中心とする保険の急増が顕著であり、個人がより収益性に敏感になったことが分かる。主婦に到るまで、一億総金融マインドの時代になってしまった。新聞でも主婦向け財テク欄に大きな紙面が割かれ、テレビで株価や為替レートが毎日報道されるようになった。財テクに関心を持てない経営者は無能といわんばかりの罪深い経営書が、数多く出版された。

株式投資については、個人株主数(延べ数)が八五年度末の千六百万人から八九年度末には二千四百万人に増加した。また、個人の年間株式売買高も、八〇年代前半の年平均五百八十億株から、八〇年代後半は一千億株を超える水準にまで増加した。