2016年1月4日月曜日

金融再生トータルプラン

今回の行政改革論議では二つの問題が入り交じっていたように思う。一つは、時代の要請に応じた最も効率的な行政機構はいかにあるべきか、である。そのためには縦割り行政の弊害を廃するために省庁を大きく統合するのも一つの方法だろう。あるいは行政の分野でも世界に通用する高度な知識・経験を要する時代になったのだから、行政組織も専門分野ごとに区分けをしたほうが効率的だという考え方もありうる。

もう一つの問題は、現代社会では複雑化・膨大化せざるをえない行政機構を、独走しないよういかにしてコントロールするかという課題である。行政組織を分割してその力を弱め、制御しやすくするという方法がないではない。しかしやはりこの問題に対処する王道は、もっと積極的に政治が行政を指導しうる態勢を整えることにあるのではないか。これはいわば行政に対する「シビリアンーコントロール」(政治の指導力)の問題である。

アメリカの国防総省(ペンタゴン)は、圧倒的・独占的な軍事力を支配している強大な行政組織である。しかしだからといって、陸・海・空の三つに分けてしまえという議論は聞かない。ペンタゴンの独走をコントロールするのは、分割して組織としての力を弱めることによってではなく、政治の指導力を確保することによって対処するのがスジである。アメリカでは、それは主として国防長官以下の政府高官の政治任命制や、見識の高い政治家が議会で常に目を光らせていることによって有効に働いている。

九七年十一月における相次ぐ金融機関の経営破綻により、預金者の不安と動揺が広がるとともに、わが国の金融システムに対する内外の信頼が大きく低下する事態となった。このままでは経済社会全体への影響も懸念されるため、早期に金融システムの安定化を図る緊急措置として、預金保険法の改正と金融機能安定化緊急措置法の制定が提案され、翌年二月十六日に成立した。この構想は、橋本改造内閣では野に下っていた梶山前宜房長官のイニシアティブで提案されたものであった。