2015年3月2日月曜日

変革型リーダーの育成

国内から配置したこのキーマンは現地人幹部との信頼関係の醸成はもちろんのこと、当社の持つノウハウを個別の地域に適合させ見事に事業を発展させました。配置し、地位を渡した結果、地位が人を育てたと言いますか、育つたというのが私の率直な感想です。こうして人が育っていくという当社の実態を見たときに、変革型リーダー育成のための人事部門の最大の役割は、人材の探索に尽きると考えております。単にラインの評価の良い人を集結せよと言っているのではありません。事業か直面する課題、経営トップが次に打って出たいと考えている分野、誰もやったことがない仕事、分野、市場へのチャレンジ等々を担える人材を経営トップが求めた時点でタイムリーに提示できる能力を求めています。

そのためには、例えば人事部門は次のような目を持つことが重要です。①現在の事業の中核を担っている、評価の良い人材をさらに異分野で生かすとすればどのような分野に期待ができるのか、②現時点の評価はともかく、機会があれば大きく化ける人材は誰か、③ほかの人と違う感性やスペシャリティを持っている人は、④人間関係・組み合わせなど、ちょっとしたことにつまずいて十分、能力を発揮できていない人、埋もれている人が組織には少なからずいるという視点などです。

しかし、OJTだけで、あとは個人の資質と努力に頼るだけでは会社が必要とする十分な素養を個々人は得ることができませんし、事業の発展スピードにも対応できません。OJTだけでは得られない最低限の知識や、経営理念をより深く理解し、自分のモノとするための経営層とのディスカッションの機会や先達の知恵、リーダーとしての身の処し方などサラリーマンでは普通は接しえない人材との接点を会社は準備する必要かあると思っています。そのために、主に日本人を対象にした経営幹部塾、外国人対象のビジネススクールを2004年秋にスタートさせました。経営幹部塾には大きく2つの目的があります。1つ目は受講生の経営者としての資質・ポテンシャルを経営トップが見極め、評価する機会とすること。2つ目はギリギリの場面での決断力・判断力などトップ経営者の資質を醸成することです。

変革型リーダーの育成とは、知識や先達に学ぶばかりでなく、修羅場に追い込んで、自らを律し、さらに言えばそれを苦しみと言わずに変革にこそ喜びを見いだす人材を育成していくことであると考えています。また、スペシャリティを身につけさせることが重要だと感じております。この道だけは誰にも負けない、というものを習得させたいと考えています。スベシャリティは何でもいい。語学でも経理でも、コンプレッサー技術でも、何か1つのことを極めたからこそ見えるものがあります。若い人にはそういうことを経験したうえで人格形成をしていってほしいと思います。修羅場の経験と、何か1つのことを極めることを前提としたうえで次の2点が変革型リーダー育成の今後の課題と考えています。

1点目の課題は、若いうちから豊富な経験をさせ、育成していくことです。より若いうちから鍛え、計画的な修羅場経験を通じて経営の視点を醸成することが重要であり、優秀な若手の質的向上を意図的に仕掛ける育成策が必要だと感じています。2点目は多彩な、異質なメンバーをチームとして束ね、1つの方向に導くリーダーシップ(ダイバーシティーマネジメント)の醸成です。グループ経営理念、人を基軸に置いた経営の理解・徹底と、それらに基づくリーダーシップカ、対話力、ダイバーシティーマネジメントを実践できる人材を育成していくことか求められています。