2016年3月1日火曜日

第七章は安保理の専権

しかし、冷戦下で安保理が麻原状態に陥ったため、総会は常に、この制約を乗り越えて権限を拡張しようと努力してきた。一九五〇年十一月に採択された有名な「平和のための結集決議」は、安保理常任理事国の一致が得られない場合は、総会に問題を付託し、総会が開かれていない場合は理事国七力国(現在は九力国)の賛成による要請か、加盟国の過半数の要請で、緊急特別会期を開くことができる、と定めた。

この決議自体は、朝鮮戦争に関連し、旧ソ連との対立で機能麻庫に陥った安保理を迂回する目的で米国が中心となっ
て成立させたものだが、その後、総会権限を強化する先例になった。

この緊急特別会期はスエズ紛争やハンガリー動乱、中東問題、コンゴ事件などに際して何度も開かれており、安保理か機能しない中で、国連の信用度をかろうじて支えてきたシステムだ、と言えるだろう。その後も総会は、安保理とほぽ並行して審議をし、国際社会の声によって安保理を牽制したり、圧力をかけるなどの役割を果たしている。

だが、ここで忘れてならないのは、その前提に立った上でなお、第七章による強制措置については、安保理の専権事項とされていることだろう。加盟国に法的な拘束力を課すという強力な権限は、あくまで安保理にのみ委ねられている。総会は、監視や監督、調査といった事項については権限を持ち、さらに国際社会の声によって政治的、道義的な圧力をかけられるが、その最終的な実行を保証する力は持っていない。

冷戦後に安保理が結束し、第七章に基づく強制措置を発動する機会が増えるにつれ、総会の権限が相対的に薄れてきたのは偶然ではない。後で見るように、国連の中で、近年安保理の機構改革が焦点になるに至った背景には、大国主導の国連運営に対する加盟国の危機感が横たわっているとも言える。