2015年2月2日月曜日

コソボ介入が露呈したもの

米国の優位は、何よりも軍備の面で際立っている。長・中・短距離の核ミサイルはもちろんのこと、通常兵器においても、その威力と精度において隔絶している。

湾岸戦争でも見られたように、レーダーによる誘導技術に支えられた「ピンポイント」爆撃能力は、遠くない将来、核兵器を無用化してしまうほどのものになる可能性を示している。

保有する装備の強大さに加え、良し悪しの評価は別として、いざとなれば実力を行使する意思を発揮し得るという点でも、米国は傑出している。

今日の世界において、国際社会のならず者を取り締まる警察力を発揮しうるのは米国だけである。本来なら設立時の理想に沿って警察機能を発揮すべき国連に実力と意思結集力がないだけに、世界秩序に対する米国の統率力は、事実上あらゆる国が認めざるを得ない。

この事実を如実に示しだのが、九八年から九九年にかけてのコソボ紛争であった。米国にとっては、国益上さしたる実利をともなわず、むしろ「国連安保理事会の決議にもとづかない国際法違反の独善的軍事力の行使」という汚名を着ることになった介入である。

「ソ連・東欧勢に対抗する同盟機構」として始まったNATOが、仮想敵を失ったあと、「国際正義(人道)のための介入」という新たな使命を追求することになった今日、白昼公然たる非人道行為に対し無力であるわけにいかないという、NATOの盟主としての立場ゆえの介入であった。

換言すれば、米国は「軍事カナンバーワン」として自縄自縛にあったということになろう。自国領土の防衛に限れば「無用の長物」ともいえる特異性を持つ米国の軍事力が、その特異性をそのままに発揮したといえる。

コソボ紛争渦中のベオグラード中国大使館爆撃では、情報面のお粗末さを見せつけた米国だが、世界的規模での軍事力展開において、何よりもものをいうのは人工衛星を利用した米国の情報力である。

古来、戦争を制するのは情報力だが、軍事技術が極度に高度化していく中で、米国の情報収集・分折・伝達に関するハード、ソフト両面の機能は、隔絶したものがある。

特に、「世界の二地占一(具体的には朝鮮半島とペルシャ湾)で同時に発生した地域紛争に対処する兵力展開能力」を前提として組み立てられた米国の世界戦略とこれを支える情報機能に比肩しうるような能力は、当分の間世界のどの国にとっても考えられないであろう。