2015年10月1日木曜日

アジア危機の主因は何か

インドネシアの企業も海外から膨大な資金を調達した。韓国の財閥もかなりの勢いで海外の資金を導入した。もともと貯蓄率の高い経済が、さらにそれに上積みする形で外国資本に依存したわけである。

しかも、それらの資金はドル建てで借人した資金だった。ドル建てということは、自国の通貨がドルに対して安定しているときはいいが、暴落したときはそれだけ借金が増えてしまう。例えば、インドネシアのルピアはいま一ドルー万三〇〇〇ルピア前後だが、ほとんどのインドネシア企業が借りたときは二五〇〇ルピアぐらいだった。この為替差損だけで借金が五倍に膨れてしまう。こうした資金に全面的に依存してきた企業なら破産してしまうことになる。

アジアの国々は、対外借入をするとき、実は為替リスクがあるということに気がついていなかった。言葉を換えれば、グローバル化、ヅアーチャル化に慣れていなかったのである。逆に、貸し手の側も、アジアは二十一世紀の成長センターという思いこみから、「アジアーリスク」というものの存在を意識せず、どんどん貸しこんでいった。

日本の銀行も競ってアジアに支店を出した。一番最後にやってきたヨーロッパの銀行もどんどんアジアに貸しこんでいった。しかも、普通ならカントリー・リスクがあり、クレジットーレーティングの低い国なら金利を上積みするのに、実際はほとんどプレミアムをとらず、低金利で貸しこんだのである。そして、最後に責任をとらないまま逃げ出してしまった。それによって危機がもたらされたのは周知の通りだ。非常に大量の資本が瞬時にして動く世界は、ある意味で非常にリスキーな世界なのである。

マハティール首相は、「我々が営々として戦後五十年かかって築いたものが、一瞬にしてなくなってしまう」と嘆いたと伝えられるが、相当数のアジアの人々が、自らの貯蓄と勤勉さで築いた富がマネーゲームで消えてしまったという割り切れない思いを抱いたのは当然のことである。