2016年2月1日月曜日

小口取引を扱うシステム

EMU外の諸国もユーロ支払いができるように、TARGETにリンクすることが許されている。TARGETは、これまでのヨーロッパの電気通信システムを大きく変えた。これまでのシステムと新しいシステムの比較を、フランスのケースを例として説明してみよう。図は、これまでの支払いシステムの構造である。取引銀行からの流れは、国内線と国際線に大別される。国内線は、小口取引(五〇〇〇フラン以下)と大口取引(五〇〇〇フラン以上)に分かれる。

小口取引を扱うシステムは銀行間テレコム通信システムSITであり、大口取引を扱うシステムは二つあるが、ひとつはすべての銀行に開かれたテレコンベンセイション・システムTBF、もう一つは有力銀行がリスク防止を分担するネットープロテジエーシステムSNPである。この国内線の三つはすべて支払い銀行に集中され、取引相手に支払われる。国際線は国際電気通信支払いシステムSWIFTによる銀行間ネットワークを通して、相手側に支払われる。これまでの実績を見るかぎり、SWIFTにはエラーが多く、コストも高くついた。

同じページの下の図は、未来のユーローシステムを示したものである。複雑な構成に見えるが、図の在来システムをベースにして比較すれば理解は容易である。つまり、在来システムに新しくつけ加わったのは、ECSとTARGETである。ECSはユーロ精算システムのことで、これまでのECU精算のための銀行間システムを母体にするものである。さしあたって、ECSの運用はSWIFTが管理するが、ユーロ登場後はECU精算がユーロ精算に替わることになる。最も重要な回線は、TBFITARGET線で、これがユーローシステムの大動脈になるのである。フランスの例で例解したが、TBFの代わりに各国の大目取引回線が位置すると考えればよい。

なお、TARGETへの域外回線のリンクについて、ちょっとした論争が生じた。域外からの「一日預金」を認めるかどうかという問題である。もし、域外の銀行が「一日預金」をするとすれば、ユーローゾーンのマネーサプライに影響し、金融政策にも影響を与えるだろう。それゆえに、そのようなアクセスは許されなかったのである。