2012年6月20日水曜日

分析は真剣勝負

ある人が面接に行ったら、自分より先の人がいて、もう一時間も待だされているという。これでは、悪くすると二時間待だされることになるかもしれないと覚悟していたら、先の人が入って十分ほどで出てきて、「はい、次」ということになったとか、いろいろとおもしろいエピソードもありました。

要するに、彼の時間感覚は時計の時間とは違っていて、そのときの流れの上で生きているところがありました。みんながそのことを知っていますから、それでも結局はつじつまが合うんです。

マイヤー先生も、そのときの流れで、五十分のところが一時間になったり、四十分でやめるときもありました。そこで私か、「先生はあんまり時間どおりにやりませんね」と言ったら、こんな返事でした。

「君は、『カルメン』は三時間だけど、『椿姫』は二時間だから、同じ値段ではおかしいとか、『カルメン』のほうが割安だとか言うかね。その作品を見にいっているんだから、作品が終わったら終わりじやないか」

私の友人のアメリカ人がマイヤー先生に分析を受けたが、分析中に先生がしきりにあくびをしだした。そこで彼は、あまり朝早くからでは先生があくびばかりしておもしろくないと思い、時間を変えてもらって午後に行くことにした。それでもまたあくびばかりしている。

そこで彼はちょっとムッとして、皮肉っぽく「先生はよくあくびされますね」と言ったら、「私は人から退屈な話を聞かされると、すぐあくびが出るんだ」と答えが返ってきました。つまり、もっと真剣にやれということなのです。分析は真剣勝負です。

私がついたもう一人のフレー女史は、反対にきっちりと時間を守る人でした。フレー博士に、「マイヤー先生は時間どおりやらないですね」と言ったら、「私はとても彼のようにはできないから、せめて時間だけはちゃんと守っている」との答えでした。