2012年6月20日水曜日

心理療法というのは、単なる人生相談ではない

心理療法というのは、単なる人生相談ではなく、人間の心の深いところにまで入りこんでいきますから、下手にやると、クライエントはおろか、治療者もおかしくなってしまうことにもなりかねません。

それだけ危険をともないますので、そういうことを避けるためにも、現実的でセレモニー的な枠をはめておく必要があります。その守りの枠が、時間と場所と料金です。

フロイトもユングも、はじめのころはむちゃなことをやっていました。ユングなど、クライエントと寝食をともにしてやっていました。

一般的には、人のために一生懸命やるのなら、時間も場所も決めず、ずっと一緒にいるほうがいいし、お金なんか問題ではないと考えがちです。

常識では誰でもそう思うでしょう。だから、彼らもはじめのころはそのやり方でやっていたわけです。ところが、不思議なことに、時間と場所と料金を決めてやったほうが効率的だということがしだいにわかってきたのです。

一つには、人間の集中力には限界がありますから、そういう一定の枠が決まっているほうが集中しやすいし、深い世界に入っていきやすい。受験勉強でも、のんべんだらりと長時間やっているより、短時間に集中してやったほうが効果的です。

クライエントはすごく苦しい思いをしています。しかも、治ることは苦しい。だから、フロイトも、「誰でも治りたくないと思っている」と書いているほどです。治る苦しみ、治る悲しさ、治る怒り・・・そういったものに耐えられなくなると逃げたくなります。

その場合、五十分なりがまん時間と時間が決まっていれば、つらいけれども、その時間内は我慢して頑張ろうという気になりやすい。時間が決まっていなければ、どうしても逃げてしまいます。