2012年6月20日水曜日

時間と場所と料金を決めるわけ

大学病院の周産期センターで、もう十年以上、臨床心理家として新生児の父母のカウンセリングをやってこられた橋本洋子さんは、ご自身の職場の性格と心理療法のあり方について、疑問を抱いておられるようです。

「なにをもって『心理療法』と呼ぶことができるのでしょうか。私は周産期という特殊な場で臨床をしてきました。普通の『心理療法』とは枠組みが異なり、自分の臨床は『心理療法』と呼べるのだろうかと、ずっと疑問に思ってまいりましたので」

周産期センターというのは、産科に併設された、生まれてまもない赤ちゃんのための集中治療室といった感じのところですが、そこで主として、赤ちゃんを産んだばかりで、その赤ちゃんがたとえば早産などで危険な状態にあるときに、橋本さんはそのお母さんのほうをケアされているわけです。

橋本さんは「特殊な場」と言っておられますが、たしかにそういうところに心理療法家が常駐していることは、一般にはあまり知られていないでしょう。

私たちはいろいろなタイプのクライエントに会いますが、橋本さんの場合は、特定の場における心理療法ということで、たしかに何時から何時までと時間を決めて会う一般の心理療法家とはかなり違うかもしれません。

心理療法という場合、狭義と広義があって、狭義で言うと、時間と場所と料金をきちんと決めてクライエントと会うというかたちになりますが、広義の意味では、根本のアイディアを生かしながら、いろいろな場面でクライエントと会っていくもので、橋本さんの場合はこちらに入ります。広義のケースを心理療法と呼ばない人もいますが、私は広義のものも心理療法に含まれると考えます。